世界では、STEM教育という新しい教育システムが、21世紀を担う子どもたちを育てる方法として有力視されています。
日本の教育制度にはまだあまり浸透していませんが、諸外国はSTEM教育やSTEAM教育を実践し未来に通用する力の育成に熱心です。
STEM教育はどのような教育システムで、どのような効果が期待できるのでしょうか?
21世紀の職業はAIによって様変わりする
AIの進化によって近い将来、仕事のあり方は大きく変わると考えられています。今まで人間がおこなっていた業務の多くは、AIをはじめとしたデジタル技術が代わりを務めるようになり、現代の子どもたちが一人前になる頃には社会のあり方そのものが変わっている、そんな予想を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
STEM教育は、そのような未来の社会を生き抜く力を身につけさせるために考えられた教育システムです。
STEM教育は科学・技術・工学・数学の頭文字をとったもの
STEM(ステム)教育とは、
Science(科学)
Technology(技術)
Engineering(工学)
Mathematics(数学)
の頭文字をとった名称です。これにArt(芸術)もしくはArts(教養)の頭文字を入れてSTEAM(スティーム)教育とすることもあります。
STEM教育のシステムは、デジタル技術が発達していく社会に対応する学力を身につけるためにこれらの学問をよくおこなうことが重要だという考えに基づいたものです。
STEM教育は、従来の「暗記してテストに挑む」、「先生から教えられたことを生徒が受動的に学ぶ」といったやり方では能力を充分に伸ばすことができません。子どもたちが自発的に考え、判断し、理解して進めていくことが重要になります。
STEAM教育の海外事例
海外の事例を参考に、具体的な学びの方法についてみてみましょう。
STEM教育を提唱した米国を筆頭に、日本と近い場所にある中国、台湾の情勢についてご紹介します。
STEM教育を提唱した米国は幼児教育から体験施設まで充実
米国がSTEM教育のために多額の予算を計上したのは、オバマ前大統領の就任中でした。現トランプ大統領もSTEM教育の重要性を認識しており、全米中の子どもが必要な教育を受けるために補助金を出しています。
米国ではこれら政府の援助により、カリキュラムの充実や、教員不足解消を実現しました。米国の子どもたちは、タブレット端末にふれて操作する、ロボットを組み立てる、プログラミングを習得するほか、自分で考えて物事を判断する「批判的思考」を学んでいきます。
また、STEM教育に特化したアフタースクールの施設もあります。3歳から14歳程度を対象としたSTEM教育特化施設では、ビデオゲームを作ったり、ストップ・モーションアニメの制作方法を学んだり。こうしたカリキュラムを教えるために、学校の教師を対象にした指導者育成プログラムも実施しています。
中国では2018年に教育省が人工知能教育導入計画を発表
中国ではAI関連の職種に就職すると高収入を得られることから、親世代がSTEM教育に注目しています。
教育省は2018年、大学の人工知能教育改革計画を掲げ、同時に小中学校にAI関連教育プログラムを導入すると発表していました。こうした動きにともなって、幼児から高校生までを対象にしたAI関連の教材も大人気。オンラインでプログラミング体験ができる習い事も、多くなっています。
台湾のSTEM教育向けブロックメーカー商品は日本でも人気
台湾の教育ブロックメーカーが販売している「Gigo」は、プログラミングを学ぶ準備教材としてよく知られており、ヨーロッパや米国、インドなどでも人気。
水力発電や信号機などを、発電システムやプログラミングの知識を使って構築できるようになっています。 日本でも、このGigoを用いた知育イベントや体験学習がおこなわれるようになってきました。
まとめ:STEM教育の重要な柱となるのがプログラミング教育
いずれの国でも、プログラミングはSTEM教育の柱のひとつとして取り入れられています。プログラミングは、きたるデジタル社会において重要度の高いスキルであると同時に、クリエイティブな刺激を得られる物事でもあります。
そのため、子どもの頃から段階的に習得させるべきと考えられているのでしょう。
なおSTEM教育は、将来高収入が見込める仕事につける可能性が高い点も注目されています。AIに奪われない仕事をするために、あるいは多様な価値観の混在する現代で強くあるために、STEM教育は世界でそのシェアを伸ばしているのかもしれません。
次回は 日本では現在STEM教育についてどのような取り組みがおこなわれている のかご紹介したいと思います。