STEM教育は、米国から全世界に広がった21世紀型の新しい教育システム。 AIの登場で大きく変わると予想される未来に適応するためには、STEM教育が効果的といわれています。
前回は世界の事例をチェックしてみましたが、日本では現在STEM教育についてどのような取り組みがおこなわれているのでしょうか?
長期休校となっても進まないオンライン授業
STEM(ステム)とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字です。これにArt(芸術)もしくはArts(教養)の頭文字を入れて、STEAM(スティーム)教育とすることもあります。
つまり、STEM教育はこれらの学問を専門的に学びITに強い未来型の子どもを育てようという教育方法のこと。理解するまで考える、芸術や物事における本質を探るなど、従来型の指導とはまったく異なるアプローチが特徴です。
また、プログラミングなどを通して自発的に考え組み立てる力を養うことで、グローバル社会でも世界と肩を並べて競える人材になれるとされています。
文科省は、2020年から小学校でプログラミング教育を導入するとしていました。しかし実際のところ、パソコンやタブレットを家庭に貸し出したり適切な授業をしたりという動きは想定より進まず、緊急事態宣言下における長期休校に対してもほとんどの公立学校がオンライン授業などの対応をとることができていませんでした。
こうした状況を鑑みると、世界と比較して日本のSTEM教育は遅れているといえます。
同じ東京都内でも公立学校の対応には差がある
もっとも問題視しなければならないのは、学校によってICT整備の度合いに差があることです。
前の記事で紹介したように、米国では多額の予算をさいて全国の学校が適切なSTEM教育を実施できるようさまざまな対策をしています。
しかしながら、日本では首都東京においても地域によって学校のICT環境には大きな隔たりが。5月中旬に公表された「ICT取り組み最新状況(https://papamamastartup.com/columns/337/)」では、豊島区や文京区、中央区などは双方向コミュニケーションが可能なオンライン環境が用意されていたにも関わらず、港区や中野区では課題提出や個別面談用のオンライン環境すら整っていないことが明らかとなりました。
STEM教育の柱のひとつは、子どもたちがパソコンやタブレットにふれることです。その次のステップとして、プログラミングやロボット組み立てといったデジタル技術の習得があります。
現状、義務教育中に学校だけでその水準のSTEM教育を完結させるのは、無理があるように見受けられます。
東京は2019年すでに「7C TOKYO」でSTEMにふれている
こうした現状をみると、デジタル技術は高校や大学で専門的に学ばせればいいのではないか、STEM教育は日本に普及していないから焦る必要はないのではないか、と考える保護者の方もいらっしゃるでしょう。
しかし、東京都は2019年の重点政策方針(7C TOKYO)において、STEM教育にふれています。記載があるのは「未来を担う子どもを育む」という項目で、
・プログラミング教育
・STEAM教育
・グローバル教育
といった個性や可能性を伸ばす新しい教育を推進するとしています。
このことから、少なくとも東京都はSTEM教育やグローバル化の必要性を認識しているといえるでしょう。
緊急事態宣言下では、多くの大学が前期総オンライン授業化に舵を切っています。また、テレワークやリモートワークなど、企業にもITを活用した新たな働き方が広がってきました。
これまでも、印鑑廃止の動きや紙の書類や通帳を削減する計画など、社会はここ数年で一気にデジタル化しています。
新しい生活様式によってこの動きが加速するならば、なおさら子どもの頃からSTEM教育式の学習にふれることは重要といえるでしょう。
まとめ:義務教育よりスピード感をもって取り組むことが重要
東京都の構想としてSTEM教育の整備は掲げられているものの、現実は2020年のプログラミング教育スタートでさえ足踏みをしている状態です。
長引いた休校や第二波の警戒、授業数の確保といった問題から、数年は義務教育に本格的なSTEM教育を導入することは難しいと想定されます。
世界と対等に渡り合う子どもを育てるためには、各家庭がアフタースクールや体験教室などでSTEM教育を取り入れていく必要があるでしょう。